盆栽にまつわるエピソード
(※とある女性の手記です)
彼氏の趣味が盆栽だと聞いて、正直、最初はあまりいい気持ちはしなかった。
驚きというより落胆、消沈かつ脱力だった。
どうしても、老人の趣味というイメージがあって、私よりだいぶ年上とはいえ、まだ三十代半ばの彼氏の趣味としては、何とも馴染めなかった。
私の中では、盆栽と言えば、サザエさんの波平さんしか頭に浮かばなかったのだ。
ただまぁ、趣味が盆栽だというだけで、普段のお付き合いに支障がある訳ではないし、特に考えないようにしていた。
ところがある日、彼の家に遊びに行った時、自慢の盆栽を散々見せ付けられた上、その薀蓄を延々と聞かされた。
最初はほとんど耳に入らなかった・・・というよりも、意識的に聞いていなかった私ではあったが、途中から、熱心に耳を傾けている自分に気が付いた。
これは、思っていたよりも奥が深く、かつ、魅力的なのではないか。うすうすとそう感じつつある自分と、これまで否定してきたプライドもあって、そう易々とは認めたくないと考える自分とが、必死に葛藤していた。
最後の彼氏の一言で、ついに私はノックアウトされた。
「一緒にやってみようよ。」
今では毎週末、彼氏と一緒に盆栽を楽しんでいる私がいる。