盆栽にまつわるエピソード(その2)
(※とある男性の手記です)
盆栽は芸術なんだ、それも完成がなく、自ら手を加え、育て、深く味わう、それを延々と繰り返す、壮大なものなんだ。
いくら友人たちにそう言っても、分かってはもらえなかった。
やっぱりどうしても、老人がやるイメージがあるようだ。
昨今、若者や女性でも盆栽を楽しむ人が増えているとはいえ、まだまだメジャーとは言い難い。
でも僕は、その希少性というか、ちょっと他とは違った優越感みたいなものに浸れる感じが、実は大好きだった。
だから、件の友人連中に「地味すぎる」とか「爺臭い」とか、色々なことを言われても、実は全く意に介していなかった。
意に介していないどころか、そう言われることに少しばかりの快感すら覚えていたのだ。
「趣味は何ですか?」「盆栽です」
あぁ、何て高尚な、素敵な会話なんだろう。
そしてそういう会話を交わした後、相手がちょっと意外そうな顔をするのが、またたまらない。
友人たちが、やれデートだ、ドライブだ、映画鑑賞だ、などとうつつを抜かしている間に、僕は盆栽に勤しむ。
この上ない喜び。至福の時間。
今、僕は、盆栽人口がもっともっと増えて欲しいという気持ちと、希少性が残る今の状況が続いて欲しいというそれに相反する気持ちとの、ジレンマに悩まされる毎日だ。